右手に剣を、左手に君を


「渚!」



雅の声に気づき、顔を上げる。


そこに立っていたはずの渚が、床に崩れ落ちる。


俺達は慌てて、そこへ駆け寄った。


同じように、玉藻も迦楼羅の元へ急ぐ。



「おのれ……善女竜王!」



玉藻は唇を噛み締め、腕の中の迦楼羅を強く抱いた。


どうやら、まだ息があるようだ。



「……ここは、ひいてあげる。

空亡様に、ちゃんと報告するから。

また会えるのを、楽しみに待っていなさい」



そう言うと、玉藻の周りに黒い妖気が立ち込める!


渚が倒れたせいか、結界がぐずぐずと崩れ始めるのが、それと同時だった。



「龍神の姫……生かしておかないから」



最後にそう言い残し、黒い妖気とともに、玉藻と迦楼羅は姿を消した。


後には、重たい静寂だけが残った。





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