右手に剣を、左手に君を


ただそれだけのことで、胸がつぶれそうになる。


黙っていると、今度は、彼女のまつ毛の隙間から。


透明な雫が、一つ。


なめらかな頬をすべり、耳に流れていった。



「……渚……」



会わせてやりたい。


渚は、きっと寂しいのだ。


忠信に、二度と会えない痛みと必死に戦いながら。


毎日、笑ってたんだな……。



「ごめんな……」



俺はそっと、彼女の手をにぎった。


少しでも、渚の孤独が癒されるように、願いながら。



同じ顔、同じ声でも、俺は忠信じゃない。


むしろ子孫の俺がいることで、忠信がもうこの世にいない事を、思い知るのだろう。



だけど。


なあ。


俺じゃ、だめか──?



ご先祖より、頼りないし。


弱いし、すぐぶっ倒れるし。


お前より、よっぽどヘタレだけど。


こんな自分が、時々どうしようもなく、恥ずかしくなるけど。



こんな俺でも、お前を、守りたいんだよ。


守られてばかりじゃなくて。


お前の力になりたいんだ。


なあ。


渚。


俺は、自分が忠信じゃなくて、恒一であることが。


すごく、苦しいよ……。


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