右手に剣を、左手に君を


「ねー御津くん。

渚ちゃん、倒れちゃったのー?」



久しぶりに学校に行くと、米倉が話しかけてきた。


雅あたりに、適当なごまかしを受けたのだろう。


その雅と健太郎は、校内を見回っているため、教室にいない。


他のクラスメートは、まだ包帯が残る俺の姿を、不気味そうにながめていた。



「あぁ……風邪で。

今朝熱が下がったみたいだから、そのうち復帰するだろ」


「そーなんだぁ。

あぁ、かよわい渚ちゃん!

看病してあげたかったなぁ……」



こいつ、バカじゃないか。


本人はぐったりして苦しんでたんだぞ。



「ねぇ、今日お見舞いに行っていい?

渚ちゃんち、どこ?」


「は?」



一緒に住んでるなんて知れたら、どんな不愉快な噂を流されるかわからない。



「いや……やめとけよ。うつるぞ」


「いいわよ!愛ちゃんのチューで、渚ちゃんのウィルスを吸い取ってあげるわ!!」



米倉は、想像の渚を抱きしめるようなそぶりをした。


クラスメートの視線が、一層冷たくなる。



「バッカじゃねえの。

いいから、本人が回復するまで、そっとしといてやってくれよ」


「んーもう!過保護なんだから!

英明に聞いたけど、御津くんって渚ちゃんの彼氏なわけ?」


「はぁ!?ちょっと、こっち来い!」



いきなり何を言い出すんだ!


多分、尾野が焼却炉での一件を話したのだろう。


しかしあれは、俺だけの問題じゃない。


フラれた野田の名前が出たら、いくらあいつでも気の毒じゃないか。






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