右手に剣を、左手に君を
彼女はまた、大きな目で俺を見た。
「あなたは、忠信様じゃないの?
顔も、声も、そっくりなのに」
「……違う。違います」
龍神相手にどんな話し方をすればいいか、わからない。
しかし彼女は、そんな事は気にしていないようだった。
「善女竜王、この者達は全員、三剣士の子孫。
生まれ変わりなのです」
ばあちゃんが、俺と雅、そして健太郎を紹介した。
「生まれ、変わり……」
そう小さくつぶやくと。
龍神の姫の大きな青い瞳から。
ぽろぽろと、涙がこぼれだした。
まるで、海が一粒の雫になったように。
「じゃあ、忠信様も、他の二人も、もうこの世にはいないの?
死んでしまったって言うの?」
美しい顔が、悲しみに歪む。
悲痛な声が、天井に響いた。
「覚えてないの……私、どうして封印されてたのか……」
全員何も話せなくなり、じっと彼女を見つめるのみだ。
彼女は一人きり、肩を震わせて、泣いた。
「どうして?どうしてなの?
忠信様は、私と共に生きると言ってくださったのに。
なのにどうして、忠信様は死んでしまって、私はまだ龍神として生きているの?」
彼女は悲鳴のような泣き声をあげ、その場に突っ伏してしまった。
俺達は誰も、彼女に声をかけられなかった。