右手に剣を、左手に君を


俺は米倉を、廊下に引きずり出した。



「尾野に何を聞いたんだよ」


「渚ちゃんを説得してる途中で、御津くんが乱入してきたって。

野田くんカワイソー。

一回くらい、させてあげれば良いじゃん。

彼氏じゃないなら関係なくない?」



米倉は、しれっとした顔で答える。



「なんて女だよ。

じゃあお前は、野田と一回だけやってくれって頼まれたら、やるか?」


「絶対、イヤ。」



米倉は、キッパリ答えた。


その瞳には寸分のブレもない。



「……ひどいヤツだな……。

じゃあ渚の気持ちもわかるだろ」


「そう言われれば、そうねぇ」



米倉はクスクスと笑った。



「……そういえば、尾野は野田と仲が良いのか?」


「え?」


「告白に付き添ってやるなんて」


「あぁ……別に、仲が良いわけじゃないわ。

英明も、頼まれると断れない性格なのよ」


「へぇ……」



それにしても、何故野田は尾野に頼んだんだろう。


そんなのは普通、他人に知られたくないし、

頼むとしても、本当に仲の良いやつに頼むはずだけど。


いや……本当に仲の良いやつが、あいつにはいないのか……。



思わずため息をつく。


すると米倉が突然、俺に顔を近づけた。


「……御津くん」


「な、何だよ」


「野田くんはイヤだけど……。

私、御津くんならイイよ」


「は?」


「……一回やってみる?」



米倉は、つ、とその白い指を俺の首にはわせた。


心拍数が、急激に上がる。


頬が熱くなり、汗が吹き出した。



「あああああ、アホかっ!」



ぺちっ。


俺は手の平で、米倉の額をたたいた。


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