右手に剣を、左手に君を
「いたぁい!
御津くん、ひどい!」
「うるさい!」
なんて恥ずかしいやつなんだ。
女の子に恥じらいを求める俺が、古いのか?
とにかく、米倉の顔を見ないように。
くるりと方向を変えた途端、目に入ったのは……。
「げっ」
「…………」
そこに立って、俺をにらんでいる渚だった。
その後ろには、雅と健太郎までいる。
「おまっ、な、なんで」
「熱が下がったから、来たの」
「あ、そうか、はは、無理するなよ」
変な汗が、ダラダラと全身を流れていく。
いつもニヘラと笑いかけてくる渚は。
ぷう、と頬を膨らませていた。
「あっ、渚ちゃん!
元気になったの?」
米倉が、明るく声をかける。
渚は小さくうなずいただけで、何も言わずに教室に入っていった。
「あらら~……。
嫉妬されちゃったかな?
もうっ、可愛いんだから」
嫉妬だぁ?
そんなわけなかろう。
三剣士としての自覚が足りないとでも、思われたんだろう。
「もう、黙れって……」
朝からぐったり疲れてしまった。
その場から離れて席につくと、すぐにチャイムが鳴り、朝礼が始まってしまった。
「なぁ」
隣の席の渚の腕をつつく。
しかし渚は、そっぽを向いたままだった。
……もしかして、本当に米倉に嫉妬してるのか?
……なんて……。
そこまで都合良く考えられるほど、俺はめでたくも前向きでもなかった。