右手に剣を、左手に君を
昼休み……。
チャイムが鳴ると同時に、健太郎に腕をつかまれた。
連れて行かれたのは、いつもの屋上。
健太郎はキョロキョロと周りを見て、誰もいない事を確かめる。
それから何故か、貯水タンクの上に行くように促された。
そこは、ギリギリ二人座れるくらいの面積しかない。
「何だよ、健太郎」
「ごめんなコウ。
内緒の話があるんだ」
「内緒の?」
なるほど、それでこんな場所か。
健太郎はその大きな目で俺を見つめて、話しだす。
「米倉愛に、近づかない方がいい」
「別に、俺から近づいたわけじゃ……」
「わかってる。
コウは渚が好きなんだもんな~」
「は!?」
どいつもこいつも、何なんだ!?
声が出ないままパクパク動く口を見て、健太郎が笑った。
「はは、ごめん。
そんな平和な話じゃなくてさ」
大きな目が、真剣さを帯びる。
俺は冷静になって、次の言葉を待った。
「そうそう、米倉。
あいつ、多分ヤバイ」
「ヤバイ?」
「この前、玉藻に俺が拉致られた時さ……。
その前に、米倉と一緒にいた記憶がないんだよ」
「えっ?」
雅の話じゃ、確かあの日は、
渚が尾野に、健太郎が米倉に呼び出されたはず。
「雅も渚も見てたし、米倉に俺が呼び出された事は間違いないんだ。
だけど、何故か俺に、その記憶がない」
「どういう事だ……?」
聞き返すと、健太郎は腕を組み、難しい顔をした。