右手に剣を、左手に君を


胸に、重たい石がのしかかってくるような感覚。


無意識に、喉が渇いていた。



「……尾野が、迦楼羅だって言いたいのか?」


「わかんねえ。

けど、できすぎてないか?

同じ日、同じ時間に俺達をバラバラにさせるように呼び出して、

妖達とリンクするような行動をとってる。

あいつら自身が妖かはわからないけど、玉藻に操られてたりって可能性は、ある」



確かに。


信じがたい、と言うか、信じたくないが……。



「まー、たった一日だけのことだし、俺の考えすぎかもしれねーけど。

雅は、十分注意しなきゃなって、言ってたぜ」


「その通りだ。健太郎の言う事は、矛盾してない」



肯定すると、健太郎は、

「そーだろ、そーだろ」

と、大きくうなずいた。



「あ、雅たちだ」



貯水タンクの上から、屋上の扉が開いたのが見えた。


雅と渚が昼飯を抱えて、こちらに手を振った。



「コウくーん!健ちゃーん!

ミルクパンあったんだよー!

奇跡的にげっとしたよぉー!」



渚はパンのおかげか、いつものように笑っていた。


その笑顔を見ただけで、緊張がホッと和らいでいく。



「良かったな!今行く!」



タンクのはしごに足をかけた時、健太郎がコソっと耳打ちした。



「コウ。どうするつもりなんだ?」



その声が意外に低くて、思わず健太郎の小さな顔を凝視してしまった。



「どうって?米倉達のことか?」



聞き返すと、健太郎はふるふると首を振った。


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