右手に剣を、左手に君を
渚
……深夜になってやっと。
龍神の姫は、泣きやんだ。
彼女は泣きはらした瞳で、ぼんやりと天井の照明をながめている。
雅と健太郎は、うちに泊まっていくことになった。
こんな時、男は便利だ。
「落ち着かれましたか?」
ばあちゃんが、麦茶と水ようかんを持ってきた。
そして龍神の姫の目の前に、ちょこんと置く。
おいおい、神様って食べ物食うのか?
そんな心配は無用だった。
彼女の腹はギュルルと良い音を立てる。
そして、スプーンを不器用に使いながら、水ようかんを食べ始めた。
一口食べて、ぽそりとつぶやく。
「おいしい……」
それからは早かった。
カツカツと音を立てながら、彼女は水ようかんを胃に流し込んだ。
俺達は、呆然とそれを見守る。
彼女は麦茶も全部飲み、ぷはっと息を吐いた。
普通の女の子みたいだなぁ。
そんな事を思っていたら、ばあちゃんが口を開いた。
「善女竜王、お話の続きをしてもよろしいでしょうか」
「ふえ?」
「ばあちゃん、明日でいいんじゃないか?
お姫さんだって、眠いだろ」