右手に剣を、左手に君を
「ただいまー」
全員で玄関をあがり、居間に向かう。
渚が、おやつあるかなぁ、と腹をおさえていた。
しかし、いつも出迎えてくれるばあちゃんがなかなか姿を現さない。
「?ちょっと見てくる」
三人は居間に座り、それぞれくつろぎだす。
俺はばあちゃんを部屋に探しに行った。
「ばあちゃん?」
しかし、戸を開けたばあちゃんの部屋には誰もいなかった。
小さなテーブルの上に、老眼鏡がぽつんと置いてあるだけだ。
……俺は、その時初めて、胸騒ぎがした。
「ばあちゃん?どこだ?」
急いで、自分の部屋に戻る。
しかしそこにも誰もいない。
どこだ?神社か?
いや……。
ざわざわと鳴る胸を押さえ、ばあちゃんの気配を探る。
すると、草薙剣が微かに応えた。
「書庫……」
声なき声で、脳に語りかけてくる剣に従い、俺は書庫へ急ぐ。
どたどたと家中を走り回っていたので、不審に思った三人が居間から顔を出した。
「コウくん?どうしたの?」
「ばあちゃんが、いない。
ちょっと書庫を見てくる」
早口で告げると、三人は目を丸くした。
俺はそれを放って、書庫への廊下を急いだ。
地下に通ずるほこりっぽい隠し階段を、踏み外さないように降りていく。
やがて、書庫の重たい扉が見えた。