右手に剣を、左手に君を
次の日……。
病院に行こうという俺の提案を、ばあちゃんはかたくなに断った。
「姫様の手当てじゃ不安だっていうのかい?」
「そんな事言ってない。
昼間は学校に行かなきゃならないんだから、入院してくれた方がこっちも気が楽なんだよ」
「バカ者。そう何回も倒れたりせんわ!」
「なんだよ、心配する孫にバカ者はないだろ!」
「まぁまぁまぁ」
「二人とも、おちついて」
朝からぎゃあぎゃあと言い合う俺とばあちゃんを、男二人が止めた。
渚はハラハラした顔で見守っている。
「とにかく、今日一日は休むから」
「勝手にせい。それで落第しても、知らんからな」
「クッ、ソババア……っ」
さらに喧嘩になりそうだったので、俺達は三人に無理やりひきはがされた。
「何だよ、元気じゃん」
玄関に移動した後で健太郎が笑って、その場が和む。
「じゃあ、俺達は行って来る。
米倉と尾野の周辺を探って、また連絡する」
「あぁ……気をつけてな」
雅も苦笑したような顔で、玄関を出ていった。
「さて……」
洗濯でもするか。
くるりと振り向くと、どん、と何かにぶつかった。
「ふきゃん!」
「渚。そこにいたのか」
「ひどぉい。さっきから、いたよぉ」
そこには、そもそも学校に行く義務のない渚が、鼻を押さえて立っていた。