右手に剣を、左手に君を
渚が俺の背に、頭をつけたのを感じた。
「……大丈夫だよ……」
小さな声が、背中から胸に伝わる。
そのせいか、また鼓動が早くなってしまった。
大丈夫。
ただそれだけしか言われていないのに。
本当に、大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
「だよな。
あのババア、殺したって死なないよな」
「ふふ、ヒドイ。ババアだなんて。
私の方が、よっぽど年寄りだよ?」
「お前、不老不死だろ。神なんだから」
腹の腕をはずし、向かい合うと。
渚は、寂しそうな顔でこちらを見上げた。
「神も、死なないわけじゃないよ」
「……え?」
「妖だって、何もしなければ不老不死だよ。
だけど、神剣に斬られたり、お祓いされれば死んじゃう。
というか、消えちゃう?
あの世に帰る、が正しいのかな」
「……神も、一緒だって言うのか」
「うん。前に言ったでしょ。
私達も、斬られたら痛い。
消える事はそうそうないけど」
「けど、皆無じゃない……」
「そういう事」
渚はうなずいた。
神も、妖と同じように消えてしまう……。
黙ってしまうと、渚の方から口を開いた。