右手に剣を、左手に君を
渚の手当てのおかげか、ばあちゃんは次の日すぐに動けるようになった。
ゆでただけの冷凍うどんをすすりながら、文句を言い出す。
「なんだね。
痩せた年寄りに、素うどんしか食わせないのかね、この孫は」
「はいはい」
もうケンカする力もない。
大体ばあちゃんは俺と同じでシャイな上に、素直じゃないだけだ。
全部真に受ける事はないのだ。
一晩経って冷静になってみると、昨日のケンカもしなくて良かったということに思い当たる。
冷静になれたのは、ばあちゃんが元気になってくれたおかげだけど。
「今日は学校へ行くんだね?」
「うん。渚は置いていくから」
朝から一緒にうどんをハフハフしていた渚は、ふえっと声を上げた。
「……そうかい。
姫様、申し訳ありません。
心配性な孫の言う通りにしてもらえますか」
「あっ、はいっ」
渚は承諾した。
ばあちゃんは、何とも言えない目で、俺をちらりと見た。
ばあちゃんにはわかったんだ。
俺が龍神剣の事を、雅と健太郎に話そうとしている事を。
俺の鞄には、ばあちゃんから受け取った古い資料が入っていた。