右手に剣を、左手に君を
学校に着くとすぐ、雅と健太郎に声をかけた。
クラスメートの視線は相変わらず冷たいが、二人は変わらない。
「おはよう、恒一」
「渚は?」
「休み。
たまには俺から皆に、内緒の話をしてやろうかと思ってさ」
雅と健太郎は顔を見合わせる。
「まさか……やっちゃったのか?」
健太郎が、おそるおそる聞いた。
雅が眉をひそめる。
「やっちゃった?って、何を?」
「バカ、やっちゃったっつったら、やっちゃっただろ」
「はぁ?」
わけのわからない俺に、健太郎は耳打ちした。
「渚と、やっちまったのか?」
「…………」
次の瞬間、健太郎は俺の拳で黒板まで吹っ飛んだ……。
「まぁまぁ、落ち着いて」
雅が俺と健太郎の首根っこをつかみ、さらに冷たく凍りついた教室から追い出した。
向かうのは、いつもの屋上。
「ひでーよ、コウ……」
殴られたアゴをさすりながら、健太郎が涙ぐんだ。
「お前がバカな事を言うからだろ!」
「冗談じゃねーか!
殴らなくてもいいだろっ!
女の子と一緒に住んでるんだから、やりたくなる事もあるだろっ!」
「ないっ!!」
「恒一、10代男子としてそれは健康な事だ。
恥じる事はない」
「雅まで……お前ら何なんだよ。
欲求不満か?」
大体健太郎は、俺に渚はやめとけって言ったばかりだろう。
悪い冗談にもほどがある。
大体、渚は小さくて、子供っぽくて、全然そんな対象じゃないっていうか……。
………………。
……すみません。
少しだけ、想像してしまいました……。