右手に剣を、左手に君を
首をブルブルと振り、雑念を無理矢理追い払う。
「だから、誰が神に手を出すかよ」
「…………」
俺のセリフに、二人は固まってしまった。
そして、雅が慎重に口を開く。
「それ……あまり、渚の前で言わない方がいい」
「は?」
「バカコウ。
渚はそれが人間全員の意見だと思って、落ち込むぞ」
「…………」
また、忠信の事か。
「もういいよ」
俺はその話を打ち切りにして、鞄からあるものを取り出した。
「何だ、それ」
健太郎が身を乗り出す。
「うちの書庫にあった、新しい資料だ。
ばあちゃんが倒れる前、話しただろ?」
「そういえばそうだったな」
雅がうなずく。
長い話になりそうなので、俺達は念のため小さな結界を張り、その中に座った。
結界をはったのは、親に教わった雅だ。
外界からシャットアウトされたそこで、俺は話しはじめた。
龍神剣の事を……。
ばあちゃんから聞いた、俺達の先祖の話を……。
「簡単に言えば、千年前に空亡を封印した武器の事がわかった。
その在処(アリカ)も」
ばあちゃんに渡された本を開くと、その漢字の多さに、
健太郎がげー、と悪態をついた。
雅は黙ってそれに視線を落とす。
「その武器は、龍神剣(リュウジンノツルギ)という。
龍神剣で、御津忠信はやっと、空亡を封印する事ができた」
「龍神剣……」
「で、それはどこにあるんだよ!?」
雅は眉間にシワを寄せた。
『龍神剣』
その名前だけで、何かを察したのだろう。
ばあちゃんが俺達に話すのをためらった理由は、そこにあった。