右手に剣を、左手に君を
「てかさぁ、コウの気持ちはどうなるんだよ!
コウは忠信の子孫だけど、本人じゃない。
そんな卑怯者じゃない。
こんな……こんな、バカみたいに優しいやつに、
好きな女を裏切れって言うのかよ!?」
ダン!
健太郎が力任せに床を叩いた。
固いそれは、彼の皮膚を傷めつける。
雅は、そんな健太郎の背中をさすった。
長いまつげを伏せたまま。
あぁ、そうか。
自分でも気づいてなかった気持ちに、二人ともとっくに気づいていたんだ。
「ばあちゃんは……そうしてほしいんだろう。
けど、最後には俺の好きなようにすればいいと、言ってくれた」
「で……。どうするんだ……」
「……正直に、話そうと思う。
先祖の過ちを。
謝って、なんとかして龍神剣を産んでくれるように、頼むしかない」
「なんだそりゃー……。
もー、頭いてぇよ……」
作戦と言えるものは、何もない。
ただ、これから渚を傷つけなければならない、俺の事を。
二人の友人は、黙って見守ると、言ってくれた。
どうしてだろう……。
どうして俺の運命は。
本当に大切なものを、遠ざけていくのだろう……。