右手に剣を、左手に君を
暴かれた記憶
結局、俺達は一限をサボった。
教室に戻ると、窓にぽつりぽつりと、水滴がつきはじめた。
「雨だ」
誰かが、不満気に言った。
降ってきた雨は、だんだんと勢いを増していく。
……あいつ、洗濯物しまってくれたかな……。
ぼんやり渚の顔を浮かべてしまう自分が、おかしかった。
帰ったら、
千年前の話をしたら、
もう口もきいてくれないかもしれないのに。
雨音のせいか、教室がいつもよりザワザワしているように思う。
二限が始まる前に、雅が気づいた。
「今日、米倉を見たか?」
「えっ?」
教室を見渡す。
確かに、米倉がいない。
嫌な予感がした健太郎が、教室を飛び出す。
そしてすぐ、帰ってきた。
「尾野も休みらしい」
俺達は視線を送りあう。
まだ、彼らが妖と関係があるという証拠はない。
しかし……。
胸騒ぎがした俺はスマホを取り出し、自宅に電話をかけた。
だが、誰も出ない。
「……念のため、帰る」
「じゃあ、俺達も一緒に……」
「いや……。何かあったら、すぐに呼ぶよ」
何回も何回も三人でサボったりすれば、さすがに周りも不審に思うだろう。
ハブにされるのは、俺一人で十分だ。
二人には、そんな思いをさせたくない。
「大丈夫。帰ったら、連絡するから」
なるべく、明るい声で二人に言うと。
俺は一人で、教室を飛び出した。