右手に剣を、左手に君を
**


コウくんを見送ってから、おばあ様と“てれび”を見ながらのんびりしていたら。


ぽつ、ぽつん。


雨が、降ってきた。



「雨か……」


「おばあ様、私、洗濯物を入れてこなきゃ」


「私も行くよ」


「一人で大丈夫ですよ。
ゆっくりしててください」


「……ありがとう……姫様……」



おばあ様は身体は良くなったみたいだけど、

どこか元気がないみたい。


妖の動きが活発化して、町の空気がますます穢れているからかな。


コウくんもそう。


おばあ様が倒れてからますます、元気がなくなっちゃった。


……私が役立たずだからかなぁ……。


コウくん達にしてみれば、妖なんか龍神の姫が一気に何とかしてくれると思ったんだろうに……。


出てきたのが、こんな私で。


ガッカリしてるんだろうな……。


私は、皆の顔を思い出す。


雅や健ちゃんは、先祖の面影はあるけど、やはり別物。


ただ、コウくんは……。


コウくんは、忠信様に似すぎてる。


顔も、声も、不器用な優しさも……。


あの深い夜のような瞳を見るたび。


私は、忠信様を思い出した。


初めて、私を愛してくれた人。


龍神の私を、妻にしてくれると約束してくれた人……。


なのに、最近は違う。


私がいつも、心に思い描いてしまうのは……。


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