右手に剣を、左手に君を


「ふぅ~」



洗濯物を取り込んでいたら、雨はますます強くなってきてしまった。


やっと全部回収した時には、全身が雨でベタベタしていた。


あ、そういえば、こんなの霊力でポイポイってしちゃえば良かったんだ。


私、なんで自分を、人の子と同じように思ってるんだろう……。


縁側から見る庭は、みるみるうちに雨に濡れていく。


……コウくん、傘持っていかなかった。


帰りまでには、やむかなぁ?


やまなかったら、迎えに行ってあげよう。


三人分の、傘を持って……。


私は、コウくんの傘に入れてもらおう。


コウくんは、優しいから。


しょうがないなって言って、入れてくれるはず。


…………。


いつも、そうやって……。


私は、コウくんの優しさを利用してる。


コウくんは、私が龍神の姫だから、優しくしてくれるに決まってるのに……。


胸が、何かにしめつけられるように、痛くなる。


なんでこの前は、あんな事言っちゃったんだろう。


いつも、いつも……。


現代に取り残された寂しさを爆発させるたび、


コウくんは手を繋いでくれた。


優しく抱っこしてくれた。


だけどね、この前の帰り道は……。


溢れたのは、寂しさじゃなかったの。


あれは、きっと嫉妬。


醜い、醜い嫉妬。


コウくんが、他の誰かを見るのが嫌だったの。


米倉さんが、妖と関係してるかもしれないと聞いたのは、その後の事だった。


< 160 / 449 >

この作品をシェア

pagetop