右手に剣を、左手に君を
「ふぅ~」
洗濯物を取り込んでいたら、雨はますます強くなってきてしまった。
やっと全部回収した時には、全身が雨でベタベタしていた。
あ、そういえば、こんなの霊力でポイポイってしちゃえば良かったんだ。
私、なんで自分を、人の子と同じように思ってるんだろう……。
縁側から見る庭は、みるみるうちに雨に濡れていく。
……コウくん、傘持っていかなかった。
帰りまでには、やむかなぁ?
やまなかったら、迎えに行ってあげよう。
三人分の、傘を持って……。
私は、コウくんの傘に入れてもらおう。
コウくんは、優しいから。
しょうがないなって言って、入れてくれるはず。
…………。
いつも、そうやって……。
私は、コウくんの優しさを利用してる。
コウくんは、私が龍神の姫だから、優しくしてくれるに決まってるのに……。
胸が、何かにしめつけられるように、痛くなる。
なんでこの前は、あんな事言っちゃったんだろう。
いつも、いつも……。
現代に取り残された寂しさを爆発させるたび、
コウくんは手を繋いでくれた。
優しく抱っこしてくれた。
だけどね、この前の帰り道は……。
溢れたのは、寂しさじゃなかったの。
あれは、きっと嫉妬。
醜い、醜い嫉妬。
コウくんが、他の誰かを見るのが嫌だったの。
米倉さんが、妖と関係してるかもしれないと聞いたのは、その後の事だった。