右手に剣を、左手に君を


すると、ばあちゃんがその手を自分から離した。



「何、してんだい……!早く行きな……!

こんなババアのために……好きな女を、犠牲にして、どうする……!」



ふっと。


ばあちゃんは、笑った。


やせ我慢の、作り笑い。


俺は何故か、泣きそうになった。



「わかった、行く。
ばあちゃん、がんばれよ」


「ああ……」



ばあちゃんは返事をすると、まぶたを閉じた。


荒い息をする胸を確認して、立ち上がる。


ばあちゃん、ごめん。


ババ不幸な孫を、許してくれ。


俺は、駆け出した。


好きな女の元へ向かって――。


< 171 / 449 >

この作品をシェア

pagetop