右手に剣を、左手に君を
すると、ばあちゃんがその手を自分から離した。
「何、してんだい……!早く行きな……!
こんなババアのために……好きな女を、犠牲にして、どうする……!」
ふっと。
ばあちゃんは、笑った。
やせ我慢の、作り笑い。
俺は何故か、泣きそうになった。
「わかった、行く。
ばあちゃん、がんばれよ」
「ああ……」
ばあちゃんは返事をすると、まぶたを閉じた。
荒い息をする胸を確認して、立ち上がる。
ばあちゃん、ごめん。
ババ不幸な孫を、許してくれ。
俺は、駆け出した。
好きな女の元へ向かって――。