右手に剣を、左手に君を
ばあちゃんの言われた通り、庭に行くと。
「渚っっ!!」
玉藻に、渚が両腕を捕らえられていた。
「離せぇぇっ!!」
草薙剣を出現させ、斬り込もうとした瞬間。
渚の首がガクンと垂れた。
そのまま、玉藻に離された両腕ごと、足下の水溜まりに、
ゆっくりと、倒れこんだ。
「渚……っ!!」
俺が駆け寄ると、玉藻は瞬時に後ろへ飛び退いた。
膝をつき、渚を起こす。
どうやら、気を失っているだけのようだ。
どこも傷ついていないのを確認して、安心した。
「……渚に何をした……」
彼女を抱きしめたままにらむと、玉藻はニヤリと笑った。
「何も……ただ、思い出させてあげたのよ。
千年前の記憶をね」
「な……っ」
「もう、人間に利用されないで良いように。
だって、可哀想じゃない。
何回も人間に利用されて、海神に見捨てられて」
よよよ、と玉藻は泣き真似をした。
ふつふつと、胸に怒りがわいていく。
「話したのか……っ」
「違うったら。
思い出させてあげただけ」
「何故お前が、その事を知っている」
たずねると、玉藻は普通の顔に戻る。
「空亡様が、自分を封印した龍神剣を滅ぼせと命じられたの。
だけどいきなり龍神剣なんて言われても、何の事?って感じで。
あなたのおばあちゃんに、無理矢理聞き出したのよ」
それで、ばあちゃんは……。
そう思う暇もなく、玉藻は続けた。