右手に剣を、左手に君を
「で、おばあちゃんの記憶から、こーんな悪どい事実が出てきたじゃない?
同じ女として、見過ごせなかったのよねー。
でも、ちょっと可哀想だったかしら」
玉藻は哀れみを込めた瞳で、渚を見た。
「私なら……怒って、あなたを殺すかも。
善女竜王は、どうするかしらね」
「……!」
「ま、これで龍神剣は封じたも同然ね。
空亡様に報告しなくちゃ♪」
玉藻はるんっと弾むと、そのまま雨の中に姿を消した。
俺は……。
ただ、渚を抱きしめるしか、できなかった。
やまない雨音だけが、俺を守ってくれるような……。
そんな頼りない錯覚に陥った。