右手に剣を、左手に君を


黙って唇を噛んでいると。


ポン、と雅が俺の肩をたたいた。



「恒一、辛いのはわかる。

だけど朝、お前は覚悟したはずじゃなかったのか?

正直に話して、先祖の代わりに謝るんじゃなかったのか」


「雅……」



顔を上げて横を見ると、健太郎が同意するかのように、うなずいていた。



「順番が変わっちまっただけだ」


「健太郎……」


「逃げていても、何も始まらない。

これからどうするかは、渚本人しか、決められない」



逃げている。


そうだよ。


そんなの、わかってる……。



「コウ。もーここまで来たらしょーがねーよ。

がつんとぶつかって、砕けて来い!!

むしろ告白して、チューでもかましちまえ!!」


「健太郎……今無性にお前を殴りたいのは、何でだろう……」



拳をにぎりしめた俺を、雅がまあまあとなだめる。



「いや、健太郎のいう事も一理ある」


「はあ?雅まで、何言ってんだよ」


「俺達は、お前の気持を渚にわかってほしい」



風のような優しいまなざしに、俺は何も言えなくなった。


健太郎がそーだよ、と雅の言葉に乗る。



「お前が渚を利用するつもりなんてなかった事を、俺達は知ってる。

あいつが好きで、片時も手を離さないで、守ってきたことも。

お前の優しさを、渚にもう一度、信じて欲しい」

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