右手に剣を、左手に君を


な、と健太郎が笑った。



「お前にしかできないんだよ、コウ」


「…………」


「渚が可哀想だと思うなら、お前が救ってやれ。

お前の、その気持ちで」



雅がモテ男らしく、俺に言い聞かせる。


とんでもないことを言われているのに。


俺はだんだんと、自分の心が落ち着いてくるのを感じた。



「……本当に、俺にできるのかな……」



渚の心を癒す事も、空亡を倒す事も。


全部が、重くのしかかる。


だけど。


逃げていても、何も良くなりはしない……。


できるだけのことは、やってみなければ。



「大丈夫だって!

コウはそこそこイケメンだって、いつも言ってるだろ?

押し倒してチューしちゃえば、こっちのもんだって!」


「健太郎……さすがにそれはひく……」


「同意だ、恒一……」



俺を、こんなに不器用に勇気づけてくれる、おせっかいな友達もいるしな。



「渚はやめとけって、深刻に言ってたくせに」


「それは過去の話を聞く前の話だろ?

もー海に帰れないならさ、今度こそお前が渚をもらってやれよ!

俺はそう思ったんだ!」


「恒一……健太郎は無視していいから、様子を見に行ってやれ」



余計な事ばかり言う健太郎の口を、雅が苦笑しながらふさいだ。


俺もいつの間にか、少し笑っていた。


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