右手に剣を、左手に君を



「好きだ……」




ピタリ、と渚の動きが止まった。


俺をゆっくり見上げた目は、


この星のように、青くてまん丸だった。


その瞳をまっすぐ見つめ、伝える。


俺の、想いを。



「……聞こえたか……?」


「…………」


「……好き、だよ……。
渚の事が……」


「……うそ……」



渚はまた涙を溢れさせ、首を弱く横にふった。



「嘘じゃない……。
何度も言うけど、こんな嘘がつけるほど、俺は器用じゃない」


「……だって」


「だって?」


「コウくん、前に、
“誰が神に手を出すか”

って、言ったもん……」



渚の言葉は。


ざくりと、俺の胸に突き刺さった。


……いや……。


きっと、彼女は、自分の胸に、

いつもこの刃を突き立ててきたんだ。


忠信を疑いながらの日々で。


そして、ほんの少しの希望は、呆気なく崩れ去る……。



「それは……」


「ごめんね、コウくん」


「渚……」


「私は、もう誰も、信じられない……」



目の前が暗くなっていくのを感じた。


渚の心を……。


誰より傷つけていたのは、俺だったんだ。


忠信と同じ顔、同じ声で、


なんて残酷な事を言ってしまったんだろう……。


それでも、笑ってくれていたのに。


俺は、その笑顔を守れなかった。



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