右手に剣を、左手に君を


腕から、力が抜けていく。


何も言えなくなった俺に、渚が泣きながら、言った。



「私を、海に、帰して……!」



と。


そのまま突っ伏して泣き出す渚を、雅と健太郎が、何とかなだめようとする。


俺は、何もできず……。


ただ、スローモーションのように思えたその光景を。


視界の真ん中にとらえているだけだった。


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