右手に剣を、左手に君を
「渚、聞けって。
俺達は、コウは、ホントに……」
「聞いても、同じだよ」
「渚!」
「何が本当でも、もう関係ないよ。
私があの人に裏切られた事実は変わらない」
忠信の名前を出さず、“あの人”と言った渚は。
キッパリと、口にした。
「もう私は、人間のために戦わない。
海神様に、龍神の姿に戻って、海に帰れるようにお願いしてみます」
それは……。
完全な、拒絶だった。
渚は俺の方は、一度も見なかった。
俺の言葉は……気持ちは。
聞かなかった事に、したらしい。
何もなかった事にしたい。
身体中で、そう言っているようだった。