右手に剣を、左手に君を


結界をはることを一時中断し、俺は倶利伽羅竜王を自宅の居間に招いた。



「呼んできます。待っていてください」


「できれば、この神社の管理者の方にもお会いしたいのですが」


「あ……すみません、今ふせっていまして。

昨日、妖にやられたばかりなもので……」



うっかり余計な事を口走ってしまった口を閉じた時には、遅かった。


倶利伽羅竜王は、思い切り顔をしかめた。



「あなた、三剣士ですよね?草薙剣を使えるんでしょう?」


「はい……」


「だというのに、身内も守れないのですか?

いったいあなたは、何をしていたのです」



面目ない……。


何も言い返せずにうつむいてしまうと、倶利伽羅竜王は、はあ、とため息をついた。


渚に似た顔だが、瞳は真っ黒で、威圧感がケタ違いだ。


本当の神様って、こういうもんなのか……。



「善女も、何をしているのです。

人間一人、癒せないとは」


「えっと……それは、色々と事情がありまして……」


「善女!善女!いるのだったら、顔をお見せなさい!!」



隣で病人が寝ているのにも関わらず、倶利伽羅竜王は、家中に聞こえる大声で怒鳴った。


おいおい、渚の姉ちゃんのわりにはキャラが違いすぎるだろ。


とにかく、早く渚の部屋に連れて行こうとしたとき。


居間のふすまが、開いた。
< 188 / 449 >

この作品をシェア

pagetop