右手に剣を、左手に君を
結界をはることを一時中断し、俺は倶利伽羅竜王を自宅の居間に招いた。
「呼んできます。待っていてください」
「できれば、この神社の管理者の方にもお会いしたいのですが」
「あ……すみません、今ふせっていまして。
昨日、妖にやられたばかりなもので……」
うっかり余計な事を口走ってしまった口を閉じた時には、遅かった。
倶利伽羅竜王は、思い切り顔をしかめた。
「あなた、三剣士ですよね?草薙剣を使えるんでしょう?」
「はい……」
「だというのに、身内も守れないのですか?
いったいあなたは、何をしていたのです」
面目ない……。
何も言い返せずにうつむいてしまうと、倶利伽羅竜王は、はあ、とため息をついた。
渚に似た顔だが、瞳は真っ黒で、威圧感がケタ違いだ。
本当の神様って、こういうもんなのか……。
「善女も、何をしているのです。
人間一人、癒せないとは」
「えっと……それは、色々と事情がありまして……」
「善女!善女!いるのだったら、顔をお見せなさい!!」
隣で病人が寝ているのにも関わらず、倶利伽羅竜王は、家中に聞こえる大声で怒鳴った。
おいおい、渚の姉ちゃんのわりにはキャラが違いすぎるだろ。
とにかく、早く渚の部屋に連れて行こうとしたとき。
居間のふすまが、開いた。