右手に剣を、左手に君を


「えぇ~……」


しかも彼女は、心底嫌そうな顔をした。



「ムリですよぉ。

寝すぎてたからか、力の使い方もいまいちよく思い出せないし……」


「はぁ?マジかよ」


「だって、わかんないんだもん。

思い出せないんだもん……」



姫は俺の顔を見て、じわぁと涙をにじませた。



「ふみー……」


「な、泣くなよ」


「いきなりそんな事、言われても……

人間は良いよね、苦しい時の神頼みがあるんだから。

じゃあ神は誰に頼ればいいわけ?」


「知るかよ……」



なんだこいつ。


神様のくせに、めちゃくちゃヘタレじゃないか。


げんなりしていると、またばあちゃんが姫に話しかけた。



「善女竜王、今世にも三剣士はいます。

この者達が、あなた様をお守りします。

きっとそのうち、記憶はもどりますよ。

それまで、この家でごゆるりと過ごして下さい」


「……はぁ!?」



この家。


ばあちゃんが管理する住吉神社の敷地内にあるこの家は、

俺の住居でもあるわけで……しかし。



「うん、そうします。

役に立つかはわからないけど……。

あぁ、空亡の復活が間違いなら良いのになぁ……」



なんと姫は、あっさり承諾。



「こらこら!勝手に決めるなよ!

この家には俺もいるんだから!」


「善女竜王、恒一の事はあまり気にしないで下さい」


「おい!」


「良いじゃんコウ、こんな美少女と一つ屋根の下かよ!
フゥ~♪」



健太郎の頭を、黙って殴ってやった。


こんな美少女だから、ダメなんだろうが。


しかも神様って……心臓に悪いだろ。


姫は、そんな事を考えている俺を見上げた。



「恒一……コウくんは、嫌なの?」


「はっ?!」



なんでいきなり“コウくん”!?



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