右手に剣を、左手に君を


唇が触れてしまいそうな距離に、神がいる。


どうしていいかわからない俺に、リカさんがささやいた。



「見せてもらいます」



そういうと、そっとその額が、俺の額に押し付けられた。


思わず目を閉じる。


すると、まぶたの裏側に、渚と出会ってから今までの事が、

まるで映画の予告編のように、場面場面が駆け足で流れていった。



「……そういうこと……」



リカさんは額を離して、つぶやいた。


俺は呆気にとられて、その場にへたりこんだ。


この人、いや、この龍神の姫は、渚とは違う力があるみたいだ。


一瞬にして、人の記憶を見透かすとは……。


玉藻だって、結構苦労する作業なのに。




「……善女、一つ言っておくけど」


「はい……?」


「この人本当に、龍神剣のことは最近まで知らなかったみたいよ?」


「えっ!?」



驚きを隠せない渚は、初めて俺の方を見た。


リカさんの言葉を疑うのは、難しいようだ。


俺の言葉は、何も信じなかったくせに。



「ほ、本当なの……?」


「管理者のおばあさんが倒れた時に、初めて知ったのね。

他の剣士にはそれから話した」



リカさんのいう事に、俺は必死で首を縦に振った。


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