右手に剣を、左手に君を


「まさかお前、忠信とは何も……?」


「わー!!」


「契ってないわよね、渚。
そんな気配、しないもの」


「ふえっ……だって、そういうのは、結婚してからだって、忠信様が……」



渚は真っ赤になったまま、床にぷしゅーと突っ伏してしまった。



「完全に、騙されたんじゃない。

人間の男はね、好きな女がいたら我慢でこないものなのよ。

“据え膳食わぬは武士の恥”って言って……」


「ま、待て待て待て!!

男が全員そうとは限らないだろ!

昔から草食だっていただろうし!」


「草食?菜食主義のこと?」


「ベジタリアンじゃなくって……だからその、タイミングとか、色々あったんじゃ……」


「???人間の言う事は、よくわからないわ」



そっちの方がわからんわ!!


俺の心のツッコミは、その後の渚の発言に消されていった。



「けど、口は吸ってくれたもん!!」



口を吸う、口吸う……なまって、ちゅー……



「それくらい、誰だってできるわよ。

この子だって、あなたを起こすときに……」


「わあああああ!!」



そんなの、渚は知らなくていいんだよ!!


頼むから、これ以上嫌われるような事しないでくれ!!


渚はわけがわからないまま、メソメソ泣き出してしまった。


「やっぱ、好きじゃなかったのか……」


と。
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