右手に剣を、左手に君を
「この、恥知らず……!」
怒りに震えたリカさんの声が、渚に降りかかる。
「そんな事、できるわけないじゃない!
いつまでそんな事を言うの!?
それを聞いたら、海神様がどれほど、悲しまれるか……!
何故あなたが海神様の怒りに触れたか、まだわからないの……!?」
「っ、やめてください!」
俺はとっさに、渚の前に出ていた。
リカさんは我に返り、振り上げた手を、ゆっくりと下ろす。
「神はもう、人間を見捨てたのよ。
今まで好き勝手してきた人間達をね。
空亡が滅ぼしてくれたら、それで好都合だと思ってる」
「な……っ」
リカさんの発言は、衝撃的だった。
神が、人間を見捨てている……。
しかし、妙に納得もいった。
そうでなければ、もう少し早く助けの手が、のばされていただろう……。
もう、神達は、人間を救う気は、ないんだ。
「そんな人間になろうだなんて、言語道断です。
……明日、迎えに来ます。
それまでに、邪念を捨てておきなさい」
リカさんはそう言い捨てると。
光の粒になって、一瞬で姿を消してしまった。