右手に剣を、左手に君を
矢のように飛んで帰る野田が、簡単に想像できた。
雅のようなイケメンの大男が、苦手なんだろう。
あるいは……。
「なにか聞かれると思って、慌てて逃げたのか……?」
「そう思うか?」
「わからない。
米倉や尾野はともかく、野田が妖に関わっているという想像が、出来ない」
「まっさきに、とって食われそうだもんなー。
まずそうだけど」
健太郎が想像して、オエ、と吐く真似をした。
雅は俺の意見に同意らしく、ため息をつく。
「そういえば、渚は?」
「部屋にこもってるよ」
「……どうすんだよ、コウー」
「どうもしようがない。
完全にフラれた。
お手上げだ」
文字通り、両手をあげたポーズに、三人分のため息が加わった。
どうする……。
このまま人間の魂が、妖に好きなようにされていくのを、だまって見ているしかないのか……?
「……こういうのはどうだ?」
突然健太郎が、何かひらめいたように口を開く。
「渚を人質にして、神たちに空亡を倒してもらう!」
「……お前が海神に殺されるぞ……」
「恒一、無視だ。こいつには無視が一番」
「ひでーな!じゃあお前らも、何か考えろよー!」