右手に剣を、左手に君を
しかも何だその、
可愛らしい上目遣いは!!
「嫌って言うか、その、年頃の男女が一緒の家で生活するというのは……」
「私、この国ができる前から存在してるけど」
「……アッ……」
そうか。
くそ、じゃあそんな見た目してんなよ。
「どうせこの子に拒否権はありませんから。
お気遣いなく、善女竜王」
ひでーよ、ばあちゃん。
もう、好きにしろよ……。
ぐったりしていると、龍神の姫が口を開いた。
「あ……その、善女竜王ですけど」
「はい?」
「長いので、あだ名で呼んでもらっても良いですか?」
「はぁ、それは結構ですが」
こいつ、本当に事態を把握してんのか?
これから妖怪と戦うのに、名前なんかどうでもいいだろうが。
「あだ名って……既にあるのか?」
雅がたずねる。
「はい、忠信様につけていただいた、通称があります」
姫は、嬉しそうに言った。
「私は、渚(ナギサ)と申します。
皆様、よろしくお願いいたします」
そう言うと、姫は初めて、にこりと笑った。
先祖がつけた名を名乗ったその裏に、寂しさが漂ったのを。
俺はまだ、気づかずにいた。
ただ、その可愛らしい顔にみとれていた。