右手に剣を、左手に君を


暗い神社を、明かりもなく走り回る。


やっと全ての札をはりおえて、結界が完成した時には、クタクタになっていた。



「情けない……」



いくらここのところ、怒涛の展開が起きていたとはいえ……。


やけに疲れやすいのは、妖に穢された空気のせいだろうか。


とにかく、自宅に帰ろうと思った矢先。



「誰かいるのか?」



人影が通った気がして、目をこらす。


こちらに気づいたのか、黒いその影はすぐに走り去ってしまう。




「おい、ちょっと……」


「待って、コウくん!」



追いかけようとした瞬間、背後から声をかけられ、思わず足が止まってしまった。



「渚?」


「…………」


「こんなところで、何を……」



振り返った先に、死んでしまったアジサイの前に立つ渚がいた。


髪と目が茶色になっている。


学校に行く仕様だ。



「どうした?なんで……」


「あの……来てくれたの。

私がずっと学校に来ないから、心配だって……」


「……誰が……?」


「……野田くん……」


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