右手に剣を、左手に君を


「……!!」



突然ひどい耳鳴りがして、頭を押さえる。


後を見ると、渚も同じようにしていた。



「何か、来た……!」



小さな声に、黙ってうなずく。


今はったばかりの結界が、早速敵の侵入を知らせてるんだ。



「どこだ……?」



家にはまだ、満足に動けないばあちゃんがいる。


気配を探ると、それは何故か神社の裏山の方に消えていく。


この前、牛の頭の妖が、大量に発生した方だ。



「……なんだ……くそっ」



渚の方を見ると、どうしていいかわからないという顔をしていた。



「渚、ごめん。

裏山を見に行ってくるから、雅と健太郎を呼んでくれるか。

それだけでいい」



頼むと、渚はふるふると首を振った。



「一人じゃ危ない」


「でも、このままじゃ逃がしてしまう」


「私も行く……連絡は、“すまほ”じゃだめ?」



だめじゃないけど……。


もう、人間のためには戦わないんじゃなかったのか?


……いや、そんな事を気にしている場合じゃない。


俺は雅と健太郎に電話をかけ、すぐ裏山の方に駆け出した。


髪が茶色いままの、渚の手を引いて……。





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