右手に剣を、左手に君を
裏山は木が繁っているせいか、神社よりより一層暗かった。
梅雨の合間の月明かりを頼りに、妖の気配を探り、追いかけていく。
道なき道を進み、足元の草が、渚の白い足に細い傷をつけた。
「…………!!」
突然、少し開けた場所に出る。
と同時に、妖の気配が一気に濃くなった。
こんな場所、この山にあっただろうか。
目の前には、黒くよどんだ池が、頭上の月を映して、ぽっかりと存在していた。
「……コウくん、剣を出しておいた方が……」
「わかってる」
渚の言葉通り、左手に意識を集中させる。
忌々しい先祖の血が、体中を駆け巡り。
やがて輝きだした手のひらから、草薙剣の束がずるりと現れた。
右手でそれを引き抜いた瞬間……。
「上!」
渚の声がしたかと思うと、池に映った月が、黒く歪んだ。
頭上で翼がはためく音がして、一気に緊張感が増す。
目の前に降り立ったのは……
間違いなく迦楼羅と、玉藻だった。