右手に剣を、左手に君を
「あら?何であなたまで一緒にいるの?」
地上に降り立った玉藻が、俺を指差してたずねる。
「お姫様だけをおびき寄せるはずだったのに、失敗しちゃった」
「偶然だろう。まあいい……」
渚だけをおびき寄せる?
まさか……
「お前達、野田に何かしかけたのか。
あいつを使って、渚を一人で結界の外に出そうとしたのか」
「さあ?答える義務はないわね」
玉藻は完全にバカにした目で、こちらをにらんだ。
「渚に、何をするつもりだったんだ?」
雅、健太郎、早く来てくれ。
俺一人じゃ、どうにもならない……。
俺はなんとか時間を引き延ばすため、相手に質問を投げかける。
「迦楼羅、どうする?教えてあげる?」
「良いだろう。お前が教えてやれ」
「はーい」
相棒が戻ってきた玉藻は、いつもよりはりきっているように見えた。
九本の尾が、ふわふわと踊っている。
「簡単に言っちゃえば、空亡様の気が変わったのよねー」
「なんだって?」
「この前は、龍神剣を使えなくすれば良いって話だったんだけど、
突然、やっぱりその剣が欲しいって言い出されたのよ」
玉藻は気まぐれな上司を持った部下は大変よー、とふざけて、迦楼羅に頭を叩かれた。