右手に剣を、左手に君を
「無理やり取り出そうと思えば、できない事はないと空亡様はおっしゃっている。
手荒な真似をしなくていいように、こうして交渉に来たのだが……」
「ムダムダ。さっさと連れて、帰っちゃいましょうよ」
その一言で、渚の顔から血の気が失せる。
「そんなことは……させない」
俺は剣を持っていない左手で、彼女を背中にまわした。
「させないって……諦めの悪い子ねえ」
「良いだろう。草薙剣の使い手よ、姫を渡したくなければ私をたおすがいい」
迦楼羅が一歩、前に出た。
俺も、そんな彼に一歩近づく。
「やめて、コウくん」
渚の小さな声が、背後でした。
「……戦わないで……」
「……じゃあお前は、こいつらと一緒に行きたいのか」
「行きたく、ないけど……」
「じゃあ、しょうがないだろう。
お前も、一緒に戦え」
でも、と小さな声をかき消すように。
突然起こった風の音が、俺たちを襲う!