右手に剣を、左手に君を


「無理やり取り出そうと思えば、できない事はないと空亡様はおっしゃっている。

手荒な真似をしなくていいように、こうして交渉に来たのだが……」


「ムダムダ。さっさと連れて、帰っちゃいましょうよ」



その一言で、渚の顔から血の気が失せる。



「そんなことは……させない」



俺は剣を持っていない左手で、彼女を背中にまわした。



「させないって……諦めの悪い子ねえ」


「良いだろう。草薙剣の使い手よ、姫を渡したくなければ私をたおすがいい」



迦楼羅が一歩、前に出た。


俺も、そんな彼に一歩近づく。



「やめて、コウくん」



渚の小さな声が、背後でした。



「……戦わないで……」


「……じゃあお前は、こいつらと一緒に行きたいのか」


「行きたく、ないけど……」


「じゃあ、しょうがないだろう。

お前も、一緒に戦え」



でも、と小さな声をかき消すように。


突然起こった風の音が、俺たちを襲う!

< 206 / 449 >

この作品をシェア

pagetop