右手に剣を、左手に君を
それは、迦楼羅の翼がはためいて起こした風の音だった。
黒い翼が舞い、彼の左手に集まっていく。
それはたちまち、短剣のような形になった。
「剣士が敵なら、それなりに相手をしよう」
どうやら、今回は剣どうしの戦いを挑んで来るようだ。
相手の攻撃のバリエーションに驚きながらも、俺は草薙剣に力を注ぐ。
迦楼羅は、一呼吸置いてから……。
一気に、突っ込んできた。
「!!」
ギイン!!
刃どうしがぶつかる音が闇夜に響く。
「コウくん!!」
渚の悲鳴に似た声がした。
負けるわけには、いかない。
剣と剣の戦いなら、勝機があるかもしれない。
「ふっ!!」
つばぜり合いの末、俺たちは一度刃を離した。
さあ、と夜風が足元の草をなびかせる。
どうやって斬り込もうか考えていると、迦楼羅が口を開いた。
「……先日の戦いでのお前の攻撃は、見事だった。
久しぶりに、じっくり戦いたい相手が現れてくれた……」
そうだった。
体育館での戦いで、俺は一瞬だが、迦楼羅と互角に渡り合ったんだ。