右手に剣を、左手に君を
「……玉藻」
「迦楼羅、私達は遊びに来たわけじゃないの」
迦楼羅の目が、玉藻を批難するように見る。
しかし玉藻はそんな事はお構いなしだ。
「草薙剣を捨てなさい、御津恒一」
「何だと……?」
「早くしなさい。
この可愛い顔に傷をつけてもいいの?」
玉藻はツ、と、長い爪で渚の頬をなでる。
「……捨てちゃだめ……」
渚は小さく言うだけで、もうもがく事をやめていた。
「早くしないと、この綺麗な目が見えなくなっちゃうわよ?」
「や、めろ……っ!」
玉藻は爪の先を渚の目の前につきつけた。
くそ……っ!
右手ににぎった草薙剣は、底を尽きかけた霊力で、にぶく光っていた。
産まれた時からこの身の中にあった、草薙剣。
これが外に現れて、良い事なんか1つもなかった。
親に捨てられ、妖退治に身を投じるはめになった。
でも……。
渚の封印を、解放した時も。
この激しい戦いの中も。
ずっと、一緒だった。
俺の半身と言っても過言じゃないくらい。
ずっと……。
一番近い存在だった……。
しかし。
「……渚……」
君を、犠牲にはできない。
君は、他の何にも代えられない。