右手に剣を、左手に君を
ガシャン。
金属が草を踏む音が、闇夜に虚しく響いた。
「コウ、くん……っ!」
俺は、草薙剣を、地面に放った。
足下に転がったそれは、もう雷の輝きを失っていた。
「バカ者め……」
迦楼羅が、ため息をつきながら草薙剣を拾い上げる。
もう戦いを楽しむ事ができないのを、少し残念がっているようだった。
しかし玉藻は、任務の遂行と、人の運命をもてあそぶ事にしか興味がないらしい。
彼女は草薙剣を捨てた俺を見て、高笑いしはじめた。
「あはははははっ!
迦楼羅、見た?
人間が、龍神の姫のために、剣を捨てたのよ!」
おかしくてしょうがないと言うように、玉藻は渚を捕らえたまま、笑った。
腹の中に怒りがたまっていくのを感じながら、俺は玉藻をにらみつけるしかできなかった。
「……?」
そんな視界の端に、木々の間から翡翠色の光と、紅の光が見えた。
雅達の神剣の光だ。
少しの希望を見た俺を、迦楼羅が絶望に突き落とす。
「無駄だ、仲間はここまで来られない」
「な、に……っ?」
思考を見透かされて驚くより、言葉の意味が与える衝撃が響く。
来られないって……。