右手に剣を、左手に君を


耳をすませると、遠くから剣が打ち合う音がしてきた。


それに、妖のうめき声みたいなものも……。



「あんた達が戦ってる間に、ちゃーんと妖を放っておいたのよ。

たくさん、ね……」



玉藻の声に、背筋が凍る。


絶対、絶命か……。



迦楼羅が、草薙剣を持ったまま、少しずつ近づく。


俺は丸腰で、神剣がなければただの人間……。


だけど、足は後ろに動かなかった。


ここから逃げても、何も変わらない。


玉藻のすきをついて、渚を奪いかえさなければ……。



「色々考えてるみたいだけど、ムダよ」



玉藻の声に答えるように、迦楼羅の拳が突き出される!



「が、あぁ……っ!」



とっさに受け止めようとしたが、それは叶わず。


腹に拳をモロに食らった俺は、また吹っ飛ばされた。


背中が木の幹に打ち付けられ、ミシ、と音がした。


それが木の悲鳴だったのか、自分の骨がきしむ音だったのか。


グラリと揺れた脳では、判断がつかなかった。



「コウくん!!」



渚の悲鳴で、何とか目を開けるが……。



「っ!!」



倒れた身体に、今度は蹴りが入った。


暴力は何度も何度も、俺に降り注ぐ。



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