右手に剣を、左手に君を
……バカ……。
神の力で全部吹っ飛ばして、海に帰れば良いのに。
俺なんか、どうなってもいいのに。
親にまで捨てられた、俺なんか……。
それでも、優しい君は。
こんな俺の死を、悲しんでくれるのか……。
なぜか、温かいものが胸に込み上げる。
痛みとは違うもので、視界が一層ぼやけた。
渚。
好きだったよ。
そんな、優しい君が。
誰より、好きだった。
しかし、とどめはなかなか刺されなかった。
頭上で、迦楼羅の声がする。
「……姫に感謝するのだな」
そう言うと。
草薙剣を、頭上に掲げ……。
その手に、膨大な妖力が集まりはじめる。
「ダメ、やめて、お願い!!」
渚の悲鳴が響くが、剣はその妖力に飲み込まれ……。
「滅びよ」
迦楼羅のつぶやきと共に、妖力の塊が、爆発した。