右手に剣を、左手に君を


「忠信様……あなたのために……」



渚はそう言いながら、震える手で、その剣を私に差し出した。


清らかな水の刀身を持ったそれは、私の顔を映す。


産まれたてのその剣を受けとると同時に。


渚は、地に倒れこんだ。



「渚……っ!」



抱き上げた彼女は、息も絶え絶えだった。


真っ青な顔で、唇は小刻みに震える。


多分、神の力を使い果たしてしまいそうなのだ。


神は、そうしたら、この世から消滅してしまう……。



「渚、渚!」



消えないでほしい。


そんな願いをこめて名を呼ぶが、返事はない。



「忠信、空亡を……」



柏原が、遠慮がちに声をかけた。


そうだ。


龍神剣を無駄にするわけにはいかない。


空亡は今にも、全てを闇に飲み込もうとしている。



「待っていてくれ……!」



私は最後に、渚の手をにぎった。


渚は力なくにぎりかえし、微かに笑った。


私はその身体を柏原と西条に預け、一人で空亡に立ち向かった。



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