右手に剣を、左手に君を
……そこからは、無我夢中で、よく覚えていない。
気がついた時には、空亡は姿を消していた。
いや、私自身が封印したのだ。
龍神剣を持ってしても、滅ぼす事ができなかった……。
仲間の元へ帰ると。
今にも消滅してしまいそうな渚がいた。
その指先は透き通り、光の粒になりつつある。
「忠信、様……」
それでも渚は、空亡を封印した私を労うように見つめた。
「渚……!」
もう声を出す力もなく、朦朧とする彼女を抱きしめる。
そんな時、傍らに置いていた龍神剣が、私に話しかけた。
《父上……》
「……龍神剣、お前か?
私を父と呼んだのは……」
《左様です。
母上はあなたのために、私を産んだ。
そしてその役目を果たしました》
何と返したら良いのだろう。
目も鼻もない、透き通ったこの剣が、私と渚の子……。
言葉は出ないが、代わりに涙が胸から込み上げた。
渚、君は。
私のために、自分の力を使い果たしてまで、この子を産んでくれたのか……。
「……渚を助ける方法は、ないか……?」
《……消滅させない方法なら、あります》
「どうすればいい!?
私はこの人を、失いたくない……!」