右手に剣を、左手に君を
龍神剣は、言う。
《私を、母上の身体に戻してください。
そうすれば、母上に少しでも力を返す事ができます》
「戻す……」
《そして……母上を、封印するのです》
「封印!?」
何故、渚を空亡と同じような目にあわせなければならないのだ。
私の戸惑いを、龍神剣は見透かしたようだった。
《母上を封印するのは、母上を守るためです。
母上は海神様に見捨てられて、残った妖全てに恨みを買う立場。
父上は、妖退治を続けながら、母上を守りきる自信がおありですか?》
……海神に見捨てられたのは、私のせいだ。
渚が、人間のために龍神剣を産んでしまったから……。
《封印しておけば、時が経つにつれて、母上は力を取り戻す事ができます》
そうするしか、ないのか。
君を消滅させないためには……。
封印しか、ないのか。
渚の身体はどんどん軽くなっていく。
迷う私に、柏原と西条が声をかけた。
「行こう。封印を、するんだ」
「柏原……」
「海辺に洞窟がある。
あそこなら、誰も来るまい」
「西条……」
共に戦ってきた二人が、私を見つめた。
それでも心を決めかねる私に、龍神剣が言った。