右手に剣を、左手に君を
龍神剣は、彼女を傷つける事なく。
ずぶずぶと、その身体に沈んでいく。
戻っていく。
渚は、何が起こっているかわからないという顔をしていたが……。
すぐに、気を失って、まぶたを閉じた。
その長いまつげの間から、透明な雫が一筋。
なめらかな頬を、滑っていった。
他の二人が、経を唱える。
洞窟の壁から岩が剥がれ、祠の形になっていく。
私は彼女を、そこに座らせた。
岩は彼女の足下から繋がり、割れ目が塞がっていく。
「渚……!」
涙が、溢れた。
もう止まらない。
「すまない……!すまない……!
私には、こうする事しかできない……!」
君は、こんな事を望んでいるのだろうか。
いつか本当に、誰かがこの封印を解いてくれるのだろうか。
その時こそ、君は幸せになれるのだろうか。
もしかして、君は。
封印される事より、消滅する事を、望んだのではないか……。
それでも、私は。
君を、消滅させる事が、できない。
君を傷つけても……。
最後に私は、渚の小さな顔を、両手で包み込んだ。