右手に剣を、左手に君を



「渚……」



もう、この声は君に届かないだろう。


そう思っても、言わずにはいられなかった。



「君が、神でさえなければ……!」



一緒に生きる事ができた。


妻にして、本当に子を産んでもらって……。


そんな事を、誰より夢見ていたよ。



「愛してる……」



何回言っても足りない。



「愛してるよ、渚。
愛してる……」



こんな残酷な事をする私を、憎んでもいい。


それでも私の魂は、君を求めるだろう。


何度産まれ変わっても。


別の人間になったとしても。


いつか……。



「いつか、会おう。

その時こそ……。

幸せにするから……」



触れるだけの口づけを与える。


君は、私が愛した人。


その印を、刻むよ。


また私の魂が……。

私の来世がこの唇に触れた時に。


目覚めておくれ。


私が、君を守る。


その手を、もう離さないから。



「愛してる……」



身体を離すと、愛しい人は完全に、祠の中におさまってしまった。


涙が、洪水のように溢れた。


嗚咽が止まらない。


渚、渚、渚……!



愛している……!



私は、どうしても。


「さようなら」と。



言えなかった。



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