右手に剣を、左手に君を



目が覚めたら……。



見慣れた天井が、あった。



意識が帰ってくる。



元の、俺に……。



「……コウ!

雅ーっ!ババ様ーっ!

コウが起きたーっ!」



健太郎の声が、起きたばかりの耳に響く。



「コウ!どうした!?
キズが痛むのか!?」



こちらを見た健太郎が、心配全開で俺をのぞきこむ。



「……い、たい……」



確かに、身体中が痛い。


起き上がるのに躊躇するくらいだ。


しかし、健太郎がそれを察知したのは、俺の顔色からじゃなかった。


横になったままの耳に、湿り気を感じる。


目頭に、目尻に、頬に……


その感覚が、だんだん広がっていった。



「泣くほど痛ぇのかっ!?
コウ、しっかりしろよ!
死ぬなよっ!」



……あぁ……。


俺はやっぱり、泣いてるのか……。



「違う……」



違う。身体の痛みで泣いてるんじゃない。


悲しくて、悲しくて。


そして少しだけ、嬉しかったから……。



忠信は……俺の前世は、ちゃんと、渚を愛してた。


利用したわけじゃ、なかった。


愛してたんだ。


そして、千年も経って、ついに出会えた……。


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